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高森明勅
2020.3.28 06:00皇統問題

「側室」に触れない男系論

国内最大の保守団体、日本会議。
その事務局を主に担っておられるのは日本協議会・日本青年協議会だ。
両協議会の皆さんとは長年、お付き合いをさせて戴いている。
どなたも真面目で、尊敬すべき方々が多い。
両協議会の機関誌が『祖国と青年』。薄い冊子ながら、皇室関係の充実した記事が特長だ。他誌を凌駕する貴重な記事を、いくつも載せて来ている。古くなった雑誌をじゃんじゃん棄てている私も、同誌のバックナンバーは多数、保存している。その3月号に「安定的な皇位継承をめぐる論点」という記事が載っている。
全体で80ページの雑誌なのに22ページもこの記事に充てている。
力のこもった企画だ。

しかし、これまで男系継承を支えて来た「側室」「非嫡出(庶出)」について、
全く触れておられない。
これは意外。

過去の実例を見ると、天皇の正妻に当たる方の平均して3人又は2人に
1人(約35、4%)は男子を生んでおられない。
それをカバーして来たのが、側室の存在であり、非嫡出による継承。
実際に、歴代天皇の約半数は非嫡出だった。
傍系の宮家の継承でも実情は大きく違わない。
しばしば、直系の男系継承を傍系が支えた、と言われる。
しかし、その傍系の宮家も「側室」と「非嫡出」によって支えられて来た。
その可能性が既に“失われた”冷厳な事実と、真正面から向き合わない男系論は、
残念ながら説得力を持ち得ない。

素朴に「旧皇族(11宮家)の男系男子孫に皇族になっていただく
という選択肢がある」(“11宮家”のうち既にいくつも断絶された)と
主張されているのは、2月10日の菅官房長官の答弁よりも
前に書かれた原稿なのだろうか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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